日本人的な複数信仰においては神と仏の間にさしたる心理的区別はない、と記したが、それでも死者を祭る仏壇は、その家の過去に個別的に関わる点で他の神々の居場所とやや異なるニュアンスを持っている。それは仏壇の所持率が、一般には長男があたる相続世帯と次男以下の創設世帯とで統計上の有意差を示すことにも現われている。静岡県のある都市のデータでは、相続世帯の88%が仏壇を持っているのに対し、創設世帯は54%にすぎない。
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この差は仏壇がたんに一般に死者を祭るのではなく、その家の先祖代々の霊のお守りをする機能を持つものとされている現実を反映したものであろう。もちろん、先祖代々ということに関連して使われる家という概念は、戦前までの長子相続を前提とした「制度としての家」である。相続については、それが家業や資産のことであれば、長男が継ぐと決まっていたのは戦前の話で、現在の民法ではすべての子に平等な相続権があるのは周知の事実であろう。しかし、今の民法にも一つだけ長男あるいはそれに代る相続者を限定した条文があって、それが仏壇にも関わるのだ。それは「系譜、祭具及び墳墓の所有権は、前条の規定にかかわらず、慣習に従って祖先の祭祀を主宰すべき者がこれを継承する」(897条)というくだりである。